ドゥニ・ヴィルヌーヴの「デューン/砂の惑星」はホドロフスキーに近づけるか【DUNE】

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 「メッセージ」「ブレードランナー2049」の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの新作映画

『デューン/砂の惑星』のリメイクが2部構成になることが明らかになりました。

ドゥニ・ヴィルヌーヴの新作『デューン/砂の惑星』リメイクは2部作になることが明らかに - AOL ニュース

 

失敗作となった1984年版「デューン/砂の惑星」

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まず殆どの方は1984年公開の「デューン/砂の惑星」というSF映画を

ご存じない事でしょう。

 

フランク・ハーバードの大作SF大河小説として有名であった「DUNE」の映像化作品

なのですが、原作小説がサイエンスフィクションの古典的名作とも

言われる程の作品であったのに対して

デヴィット・リンチ監督による当時の映画版は酷い出来で、その膨大なストーリーを

まとめきれずに冒頭から紙芝居とナレーションによるダイジェストから始まり

原作者すら非難するほどのクズ映画のレッテルを貼られた

致命的な作品となってしまったのです。

 

 

未完成の超大作「デューン」

実はこの作品、デヴィット・リンチ以前にも映像化を試みた事があって

当時最高のスタッフを集めて製作直前の段階までいきながらもスポンサーが集まらず

製作が中止となった過去があるのです。

この時に作成された膨大な絵コンテやスケッチは現在も残っていて

スターウォーズなど後のSF作品にも影響を与えたとも言われています。

 

 

超豪華すぎたスタッフ

未完成版「デューン」(以下、ホドロフスキー版と呼びます) は

アレハンドロ・ホドロフスキーという監督・映画プロデューサー主導で

準備が進められてきた映像企画で、彼の集めたスタッフが

まさに当時の最先端をいく、とんでもない大物ばかりなのです。

 

絵コンテ:ジャン・ジロー(メビウス)

各種デザイン:H・R・ギーガー、クリス・フォス

音楽:ピンクフロイト

脚本:ダン・オバノン

主演:ミック・ジャガー、オーソン・ウェルズ、サルバドール・ダリ

 

ジャン・ジローは大友克洋や宮崎駿などに直接影響を与えたフランスの漫画家です。

H・R・ギーガーは後に「エイリアン」のデザインで有名になる画家で

ダン・オバノンは「エイリアン」の原案・脚本、スターウォーズのVFXも担当。

主演俳優にミュージシャンのミック・ジャガーにハリウッドの大物オーソン・ウェルス

そして銀河皇帝役に芸術家のサルバドール・ダリ(!?)まで

集めてきてしまったのです。

 

これだけの凄いメンバーをホドロフスキーは集めてきた訳ですが

この当時のSF映画は業界内でも軽く見られていて、これだけのメンバーですから

どの映画会社も興味は持ったものの、10時間を超えるであろう上映時間と

予想される高額な制作費に出資をしてくれる所はどこも無かったのです。

 

この企画が中止され、行き場の無くなった一部のスタッフが集まって製作されたのが

あの「エイリアン」なのです。

 

 

アレハンドロ・ホドロフスキー

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このホドロフスキーというじいさんが凄い熱意を持った男でして

『ホドロフスキーのDUNE』という、「デユーン」を映像化しようとして

頓挫するまでを回想し追っていくだけのドキュメンタリー映画が製作されたほどで

大勢の人間が今でもホドロフスキー版デューンがこの世に出なかった事を

惜しんでいるのが分かります。

 

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これだけの豪華スタッフをどうやって集めたのか

ホドロフスキーは「デューン」に関わるスタッフ達の事を「魂の戦士」と呼んでいます。

この「魂の戦士」としての基準も凄く、熱意の感じられない奴は既に名の売れてる有名映画に関わった中核スタッフであれ必要ないと切り捨てていくのです。

 

原作デューンに出会ったホドロフスキーは作品に感化され「魂の戦士」を探す旅に出ます。

 

ダン・オバノン

そこでホドロフスキーは当時全くの無名だったダン・オバノンに目を付けます。

オバノンは将来映画で食べていく事を目標としていて、大学の卒業時に「ダークスター」(1974年)という、後の「エイリアン」の原型となるSF映画を製作し本人も出演していました。

後に商業映画として「ダークスター」はわずか15館だけで公開されましたが、万人に評価されるものではなく一部のマニアたちの間で話題になる程度でした。

 

しかし、この当時名も無き学生の作った映画「ダークスター」を熱烈に評価した人物が居たのです。そう、それがアレハンドロ・ホドロフスキーだったのです。

ホドロフスキーはダン・オバノンに会いに行き、初対面のオバノンにお前は魂の戦士だと訳の分からない勧誘を始めたのです。

そして懐から大麻を取り出しオバノンに渡すと2人して吸い出しました。

 

この日は1日中2人でドラッグをキメて何を話したかは覚えていないそうですが、すっかり打ち解けて後のインタビューでオバノンはホドロフスキーに後光が差していたと語っています。

 

 

オーソン・ウェルズ

既にハリウッドでは成功し、高額なギャラの要求や仕事を選ぶ傲慢な人物となっていて この大物俳優を引き入れるのは困難とされましたがホドロフスキーは大胆な方法で接触します。

 

オーソン・ウェルズにはお気に入りのレストランがあり

いつもそこで食事をするのですがその日は貸し切られていました。

レストランを貸し切っていたのはホドロフスキーでオーソン・ウェルズが参加を決めてくれたらレストランとシェフを買収して撮影現場の横でいつでも料理が食べれるようにしてやると交渉したのです。

 

自分の為にここまでされたらオーソン・ウェルズも折れるしかありません。

 

 

サルバドール・ダリ

ホドロフスキーはダリの無茶な要求を全てのみました。

「愛人を姫役で出せ」「キリンと象を出せ」

さらにはダリはハリウッドで一番高いギャラを要求、撮影1時間当たり10万ドルのギャラを請求するもこれもOKしてしまいます。

 

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴがやりたいのはホドロフスキー版?

ここまで説明してようやく分かってきたと思いますが、私含めて多くの人が

観たがっているのは1984年のデヴィット・リンチ監督版のリメイクではなく

ホドロフスキー版のイメージに近いものなのです。ですので、ひょっとしたら

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がやろうとしているのもそういう事なんじゃないかと

期待をしているのです。

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴは007シリーズの最新作の監督候補に挙がっていましたが

「デューン」の製作のため、これを断っています。

去年の「ブレードランナー2049」でもまるでリドリー・スコットだったら

こう撮るに違いないというような感じで寄せていった印象を受けたのですが

同じようにホドロフスキー版に寄せて作ろうとしているのであれば嬉しいですね。

 

ホドロフスキーもドキュメンタリーの最後に600ページを超える当時の企画書を

持ち出してきて、誰かが今後これを使ってDUNEを作ってくれるのであれば

それは全然構わないと本人も言っているくらいですからね。